めっきのあれこれ

(2) 鉄を守る溶融亜鉛めっき

記事提供:イワブチ㈱
2013.8.30
 ●溶融亜鉛めっきって何?
 溶融亜鉛めっきとは、鉄鋼材料の欠点である「錆」を長期間に渡って防ぐことができるめっき方法です。
 加熱して溶かした亜鉛の中に品物を浸漬させる方法であり、「ドブ漬けめっき」や「天ぷらめっき」とも呼ばれています。溶融めっき法は、電気めっき法よりも厚い皮膜を得ることができ、皮膜の厚さが厚いほど、長期間耐食性を発揮することができます。この溶融亜鉛めっきは、鉄塔や鋼管柱、金物類など、様々な鋼構造物の防錆処理として使用されています。
 
●溶融亜鉛めっきってどうやってめっきするの?
 溶融亜鉛めっきは溶かした亜鉛の中に品物をいれてめっきをします。このめっきの前には前処理を行う必要があります。前処理は油汚れを除去する「脱脂」、鉄にできた錆を除去する「酸洗」、鉄と亜鉛が合金化反応するように皮膜を作るための「フラックス処理」、水分を無くすための「乾燥」があります。この前処理工程の良し悪しでめっきの密着性など、品質に大きく影響します。
 
                ※一般社団法人 日本溶融亜鉛鍍金協会 技術資料より引用

●溶融亜鉛めっきはなぜ耐食性が高いの?
 溶融亜鉛めっきは、亜鉛の持つ2つの特徴によって優れた耐食性を示します。
①保護皮膜作用: 亜鉛の保護皮膜作用によって、鉄のように早く腐食が進行することはありません。
②犠牲防食作用: 皮膜に傷が発生しても、周りの亜鉛が優先的に腐食することによって鉄素地の腐食を防ぎます。

 また、溶融亜鉛めっきの亜鉛皮膜は密着性に優れ、長期に渡って剥がれることはありません。
 

●保護皮膜作用って何?
 亜鉛は時間の経過とともに、皮膜が腐食して減っていきますが、このときに作り出される物質(腐食生成物)は保護性に優れたち密な皮膜を形成するため、その後の腐食の進行を遅らせる働きをします。これを保護皮膜作用といい、溶融亜鉛めっきが高耐食性を示す防食機構の1つです。
 
                     ※一般社団法人 日本溶融亜鉛鍍金協会 技術資料より引用

●犠牲防食作用って何?
 亜鉛めっきには、めっきに傷が生じ、素地の鉄が露出しても、傷の周囲の亜鉛が鉄より先に溶け出し、電気化学的に鉄を保護し、鉄素地の錆を防ぐ効果を持っています。これを犠牲防食作用と呼びます。
 この効果は塗装のみを施した場合には見られない効果です。
 このような亜鉛による効果を利用した防食方法は他にもあり、例えば船舶では、船体が錆びないように外板に亜鉛板を貼り付けその亜鉛板を選択的に腐食させることで、船体の錆を防ぐ方法があります。
 
                ※一般社団法人 日本溶融亜鉛鍍金協会 技術資料より引用

●溶融亜鉛めっきの寿命は何で決まるの?
溶融亜鉛めっき製品を長持ちさせるには「めっきの厚さ」と「密着性」が重要です。
①めっきの厚さ
 溶融亜鉛めっきは腐食生成物が保護皮膜となって腐食の進行を遅らせますが、徐々にめっき皮膜は減少していきます。よって溶融亜鉛めっきの寿命は、めっきの厚さに依存し、めっきが厚ければ製品は長持ちします。めっきを厚くするためには、めっき浴の温度と浸漬時間を調整することで厚くすることができます。また、鋼材の材質(化学成分)や形状、大きさによってもめっきの厚さは変化します。めっきの厚さの参考値はJIS H 8641「溶融亜鉛めっき」にも以下のとおりに記載があります。
 
材料の厚さによる溶融亜鉛めっきの膜厚
             ※日本工業標準調査会 JIS H 8641「溶融亜鉛めっき」より引用
②密着性
 「めっきは剥れるもの」とイメージする人も多いかもしれませんが、溶融亜鉛めっきはめっき時に、亜鉛と鉄の合金層を形成するため非常に密着性に優れていますので、簡単に剥れることはありません。また、密着性はめっきの前処理が大きく影響します。
 
                ※一般社団法人 日本溶融亜鉛鍍金協会 技術資料より引用
次回も引き続き溶融亜鉛めっきについてご紹介します。


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