進化中の分線金物

(3) サビよ、さよなら究極のブンカナ

記事提供:東高通信工業㈱
2013.10.31
 第1回掲載ではブンカナの変遷を第2回では「いろいろあったね、分線金物」をご紹介いたしましたが、今回は「サビよ、サヨナラ究極のブンカナ」と題して高耐食分線用金物の紹介をさせていただきます。
 
●金物高耐食化の課題
 NTT様よりブンカナを含め、塩害地域でのメッキ削れによる、腐食落下事故対策、延命化を目的に高耐食化への物品改良開発依頼を受け、引留3社WGとしてブンカナの高耐食化改良に着手いたしました。
 ブンカナは、支持板(ダイカスト製)、フックとナット(冷間圧造用炭素鋼線材製)、ワッシャー(冷間圧延鋼板)で構成されております。
 支持板はダイカスト製ですので高耐食化の課題はクリアー出来ましたが、フック・ナットはメッキ(溶融亜鉛メッキ)を施しておりますので、接触する箇所(引留具リングとブンカナフック部)では、特に塩害地域、強風地域での摩耗が激しくメッキ部層が削れて薄くなりサビ発生の原因に繋がります。
 
●高耐食化(サビない)方法調査
 例をあげると、溶融亜鉛メッキのような鉄材に後処理をする粉体塗装、亜鉛アルミ合金メッキ、亜鉛アルミ溶射などがあり又、材料そのものを鉄から高耐食材料(ステンレス等)の素材を使用する方法の検討を始めました。  

 表.ブンカナにおける比較検討結果
        

 ★Zn:亜鉛  Al:アルミ 

 上記検討の結果、構成部品材料そのものを鉄から高耐食素材とすることとし、
ステンレス材(SUS430)に決定しました。
 

(フック編)
 フック用仮型を作製し試作を重ね、フックは完成しました。
 ステンレス材の特性で、金型内で「焼付き」易いという問題があり、フックボルト加工時に「焼付き」起こしにくいようにステンレス線材に焼付き防止加工を施しており、加工後ステンレス本来の特性が活かせるようにパシペート処理(不動態皮膜処理)を施します。
 
(ナット編)
 引留具リング部とブンカナフック部が接触による摩耗で腐食し易いことから、フック部だけをステンレスにすれば良いのですが、異種金属接触腐食の問題から、ナットも同様にステンレスにしました。
 ところが、ステンレスナットは締結時に「焼付き」、カジリ(※)を生じ易いため、ナットには摩擦抵抗を減らすためフッ素コーティング加工を施し、「焼付き」を起こしにくいように工夫をしました。
 ※カジリ=摩擦熱によりネジ山同士が発熱により膨張融着し動かなくなる。
 
(ワッシャ識別編)
 既存のブンカナと高耐食ブンカナとの識別については、見た目フックが光って見えるぐらいで識別しにくいため、ワッシャで識別出来るようにしました。 又、ワッシャには黒染めを施し、工事会社様が識別しやすいように工夫しました。
 一般的なステンレスの黒染めは酸化鉄被膜を付けますが、鉄を付けるため錆易いため、特別な黒染めを施しました。
 
●高耐食検査検証より究極の分線用金物「S」誕生
 高耐食検査検証は塩水噴霧試験、ヒートサイクル試験を実施又、検証後の製品の機械的特性である、滑り留め・脱落試験等行い問題がないことを確認いたしました。
 H24年4月より納入の分線用金物「C」が「がっちりくわえて離さない」タイプで、支持板形状の大型化、把持部溝の改良により高把持力・高強度を持ったブンカナとなり、更に高耐食分線用金物「S」の誕生によって設備延命(トータルコストダウン)へ、ブンカナは進化しており、現在分線用金物「S 」は平成25年1月よりNTT東日本エリアにて納入させていただいております。
 尚、今後もブンカナはお客様のニーズに沿って進化をし続け、安心・安全な金物として日々取り組んでまいります。

 以上


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