進化する通話録音装置

(3) 音声の『保存』から『活用』へ

記事提供:㈱タカコム
2014.10.31
 ●録音データの可搬性
 アナログ信号をテープ媒体に記録していた通話録音装置で録音内容を持ち出そうとした場合、
 ①そのテープそのものを持ち出す
 ②再生しながら別のテープレコーダで録音し持ち出す
といった対応が行われていました。①の場合は代わりのテープとの取り替え、②の作業中は録音ができないなどの制約があり、この頃の録音データの可搬性は決してよくありませんでした。
 また、アナログ的な複製の場合は原理上音質の劣化は避けられませんでした。
 前回ご紹介しましたデジタル対応により使い勝手は大きく改善されましたので、音質の劣化なく音声データの可搬性を向上する取り組みに着手しました。
 
●パソコン、ネットワークとの親和性
 音声データの可搬性を向上することで、通話録音装置の利用シーンが大きく拡がる可能性が予測されました。その狙いで、この頃急速に普及し始めたパソコン(以下PC)や、それに付随する各種汎用インターフェース、さらにはコンピュータネットワーク(以下ネットワーク)との親和性向上に取り組んだのはごく自然な流れでした。
 PCとの接続対応はUSBから手掛け、前回ご紹介しましたVR-D175の前モデルVR-D170を最初の製品として投入しました。VR-D170はUSBでPCと接続し、専用再生ソフトVPS170を使用することで、PCへ音声データ転送やPCでの再生を実現しました。音声はデジタルデータで扱っているため、無劣化で転送時間も録音に要した時間よりも遥かに短時間で行われました。
 このUSBは使い勝手的にはお手軽でよかったのですが、接続距離は数メートル程度、さらに複数の通話録音装置を一元管理するとなるとすぐに限界が見えてきました。
 このため多チャネルの通話録音装置ではLANポートを設け、ネットワーク経由での検索や再生、通話のモニタ、さらには音声データをサーバへ転送することで複数の通話録音装置を一元管理できるようになりました。
 接続距離の問題も比較的近距離であればLANのみで、さらに遠隔地とはWAN経由でも行えるようになり、利用シーンを拡げる基礎づくりが確立されました。
 

 
●VOC活用に向けた技術開発
 通話録音装置に求められる機能も時代と共に多様化し、ただ録音できるだけの装置から「いつ」、「誰が」、「誰と」通話したのか記録できる装置が求められるようになりました。これが実現できると通話録音装置のユーザ様にとって「お客様の声(VOC:Voice of Customer)」を活用できる可能性が拡がります。
 技術的に「いつ」は比較的得やすい情報ですが、「誰が」、「誰と」を知るためには電話番号情報を得たり、さらにはどの電話端末で、どのオペレータが通話したのかを取得しなければなりません。これらの情報は電話回線上の情報だけではすべて得られず、PBX(構内交換機)と連携することで実現されます。
 各社のPBXの仕様に合わせて連携できる通話録音装置が順次開発されました。
 

●応対品質向上への活用

 昨今、各企業の電話相談窓口への問合せを行った際に「・・・この電話は応対品質向上のため録音させていただいております・・・」といったメッセージが当たり前のように流れるようになりました。以前はトラブル回避が目的だった通話録音も、多彩な検索キーによる絞り込んだ検索・再生が可能になったことで、オペレータ教育・品質向上に利用されるようになりました。また、ネットワークの普及により、他拠点での電話応対内容のモニタリングなど管理業務への活用の幅も広がりました。
 通話録音はVOC活用により、顧客満足向上や市場ニーズの把握といった経営的な観点からも重要視されるようになっています。
 

 次回は「光、IP電話時代への対応と進化」についてご紹介します。

 

ページトップへ矢印