進化するプロテクタ(連載第2回)
――強さの秘訣はここだよ――
記事提供:マサル工業
2013.8.30
|
●ワイプロの強さ |
ワイヤプロテクタ、略してワイプロ。
今から60年も前の1950年代、家庭に1台ずつ電話もない頃、オフィス向けの電話が出回り始め、もともと机上に置かれた電話に繋がった電話線はどうしても床にころがさざるを得ませんでした。
床に這わせた配線を踏みつけたり、浸水などによる損傷から守るため、床用に作られた当時の鉄製のワイプロ(当時はモールと呼ばれていた)、鉄製だけに強度は抜群でした。
時代は移り変わり、プラスチックの実用化時代に突入、鉄製のワイプロもオール樹脂製のワイプロに変化しました。
材質は変わっても、使用用途は変わりません。したがって、樹脂に変わっても同等の強度を有することが必要でした。
|

|
鉄製ワイプロ 樹脂製ワイプロ |
試作の末考案した現在のワイプロの原型でもある形状は、ベースから立ち上がる「くの字」形の両側壁を有します。これは入線したものが容易に飛び出さないようにしたもので、カバー上面からの圧縮も吸収する効果があります。
また、床面に配線するため、上面の角をとった台形形状と強度を保つため肉厚が厚くなっています。これで躓かれても割れたり座屈したりない、樹脂製でも強いワイプロとなりました。
|
●材料による強度アップ |
樹脂化した当初のワイプロは、一般的な硬質PVCでした。
しかし、この一般的な硬質PVC(Poly Vinyl Chloride)では寒冷期には割れが発生するという問題がありました。そこで、寒冷地や寒冷期の使用を考慮し、材質の改良を研究することとなりました。
当時、PVCにABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)をブレンドすることで機械的強度を向上させることは公知であり、電気通信研究所 樹脂研究室では600号電話機のハウジングをABSブレンドのPVCの材質にすることについて成果を得ていたときでした。
そのため、この技術を応用する方針が打ち出され、電気通信研究所指導のもとABSブレンドのPVCの材料でのワイプロ製作に着手することとなりました。
ABSのブレンドの割合,成形条件を試行錯誤・・・
そうして、寒さにも強いワイプロの製作に成功!更に強さを増すことができました。
|
●ワイプロの強み |
鉄製ワイプロも当時は画期的な商品でありましたが、やはり施工性が悪いという問題がありました。樹脂製に変わったことで、更なる利点が生まれ床面にも使用できる強度があるということは、現在でも強みとなっています。
当時考案された樹脂製ワイプロは、次のような利点があります。
@鉄製に比べ軽量で作業性がよく、持ち運びも楽
Aはさみで簡単に切断できるので、現場合わせの造作が容易
例えば、ワイプロを点線の通りに切断して付き当てると、平面の直角接続が可能です。
|
 |
B配線の際、ベースからケーブルが飛び出し難い
くの字型の両側壁が、ケーブルの飛び出しを抑えます。
|
 |
C配線を追加したり、撤去したりする作業が、カバーを外すだけで簡単に作業できる
今となっては、当たり前のようなことですが、当時としてはやはり画期的でした。
そして、その仕様は今でも時代に合った形で受け継がれています。
次回は、「流石!光はホントにすごい」で光ケーブルの配線についてお話致します。
|