雷ガードあれこれ(連載第2回)
――直撃雷と誘導雷、機器が恐れているのは誘導雷――
記事提供:鞄辰電機製作所
2013.8.30
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●雷の種類? |
雷の種類分けの方法はいくつかありますが、ここでは「夏雷」・「冬雷」という種類分けをご紹介します。一般に雷を起こす雲の共通な特長は、高度数kmに及ぶ強い上昇気流があり、その上端は気温が−20℃より低い高層におよんでいることです。この−20℃というのは、日本の夏では地上7〜8kmにあるのに対して、冬の北陸地方では3〜5kmとなります。
日本の夏の雷は、雲頂が8〜16kmにおよびます。地表付近の大気が高温多湿となり、これに加え上空に乾燥した比較的寒冷な気団が存在した場合、上昇気流が発生します。そして日差しの強い夏に寒冷前線が日本列島を横断する時に各地で大雷雨が発生します。このような夏の雷を「夏雷」と呼びます。北関東に多いのはこのタイプの雷です。
これに対して、冬の日本海沿岸で発生する雷は雲頂4〜6kmの雲中内で発生します。シベリア大陸からくる寒気団と日本海海面付近の低層との気温差が大きい11月から12月にかけて雪雲の中で雷が発生することが多いです。これを、夏の雷と区別して、「冬雷」とか「雪雷」と呼びます。雷雲の高さが低く、夏の雷に比べてエネルギーが大きいのが特徴です。
また、4月から5月にかけて発生する雷は、前線に沿ったところで、特に気温差の大きい強い寒冷前線が通過するときに発生し、これを「春雷」と呼ぶことがあります。
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●直撃雷と誘導雷? |
これは雷の種類ではなく、雷撃のパターンです。
直撃雷とは、建物等への直接の落雷です。メカニズムは以下の通りです。
・雷雲下部の負電荷に誘起されて、地表面上に正電荷が蓄積されます。
・この地表面の正電荷と雷雲下部の負電荷によって強い電界が生じます。
・通常地表面上の電界は晴天時1OOV/m程度ですが、直撃雷が発生するときには50kV/m程度
になっています。この強い電界によって、大気が絶縁破壊すると直撃雷となります。(図 1)
この絶縁破壊は、負電荷が地上へ落ちてくる方向なので、負極性の雷と呼ばれています。負極性の雷は全体の90%であり、残りの10%は正極性です。正極性の雷は,冬季の北陸などにおいて、寒冷前線によって発生した界雷が低い地上高のときに、雷雲上部の正電荷と地表面の負電荷間で直接放電するものです。(図 2)
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●建物の中でも注意が必要 |
建物の中に避難したからといって、100%安全かというと、そうではありません。建物に落雷があった場合、雷電流はいろいろなものに伝わって流れます。特に電話線や、電灯線を伝わって、外部に流れたりもします。従って、建物の中に避難した場合でも、電線や金属管などからできるだけ離れること、“壁や柱から離れる(できれば2m以上)こと”が大切で、部屋の中央に寄っているのが安全といえます。
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(図 1)直撃雷:負極性(90%) (図 2)直撃雷:正極性(10%) |
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誘導雷には、次の2種類があります。 |
(1) |
構造物などへの直撃雷によるもの建物、木などへの直撃雷電流によって付近に強い電磁界が生じ、電磁誘導によって近くの通信線・電力線に電圧が発生します。(図 3) |
(2) |
雷雲間での放電によるもの二つの雷雲間で、正電荷と負電荷が放電すると、通信線・電力線上に拘束されていた電荷が解放され両方向に移動します。この電荷の移動がサージとなって、通信線・電力線に電圧が発生します。(図 4)
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(図 3)誘導雷-木立への直撃による誘導雷 (図 4)誘導雷-雷雲間の放電による誘導雷 |
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●機器が恐れているのは誘導雷 |
誘導雷は直撃雷に比較して発生頻度が高いため、雷被害が発生する確率は高く、通信機器が被災する確率も高くなります。 |
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直撃雷 |
誘導雷 |
雷被害の頻度 |
低い |
高い |
被害対象 |
建物
設備・機器全体 |
情報通信機器
家電製品 |
被害様相 |
火災、設備・機器の焼損 |
内部部品の破損等 |
誘導雷から通信機器等を守る対策としては次のようにすることが有効です。 |
(1) |
共通接地法(等電位ボンディング)
通信線・電力線全ての接地が共通に接地することによって、接地間相互の電位差を発生させない方法。 |
(2) |
バイパスアレスタ法
通信機器の通信線と電力線の間に並列に避雷器を挿入し、雷サージをバイパスする方法。 |
(3) |
絶縁法
耐雷トランスを使用することで電気的に絶縁する方法。 |
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が考えられます。(1)は現状の日本ではその実現は未だ難しく、(3)は(2)のバイパスアレスタ法よりコストがかかってしまうため、(2)のバイパスアレスタ法が通信機器の雷防護対策が最も用いられています。
以上雷防護対策をご紹介しましたが、一番有効なのは、雷を予測して通信機器の電源を抜くことです。(笑)
次回は各種保安器の歩みについてご紹介いたします。
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